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フィリピンと日本の学校制度を徹底比較!教育文化の違いとその背景を解説
2025.07.01記事

フィリピンへの赴任や移住を検討される際、最も関心の高い事項の一つが現地の教育制度です。日本とフィリピンでは、教育システムの構造から学校生活の文化まで、大きく異なる特徴があります。本記事では、教育関係者や海外赴任予定の保護…
フィリピンへの赴任や移住を検討される際、最も関心の高い事項の一つが現地の教育制度です。日本とフィリピンでは、教育システムの構造から学校生活の文化まで、大きく異なる特徴があります。本記事では、教育関係者や海外赴任予定の保護者の方々に向けて、両国の学校制度の違いを具体的に比較し、その背景にある文化的要因まで詳しく解説いたします。
1. フィリピンと日本の学校制度の概要
1-1. 教育制度の構造と義務教育期間の違い
フィリピンと日本の教育制度には、根本的な構造の違いがあります。以下の表で比較すると、その差が明確になります。
項目 | フィリピン | 日本 |
義務教育期間 | 13年間 | 9年間 |
教育制度名 | K-12制度 | 6-3-3制 |
幼稚園 | 1年間(義務教育) | 任意 |
小学校 | 6年間 | 6年間 |
中学校 | なし | 3年間 |
高等学校 | 6年間(前期3年+後期3年) | 3年間(任意) |
制度改革年 | 2012年 | 1947年 |
フィリピンでは2012年にベニグノ・アキノ政権下で「K to 12」制度が導入され、幼稚園1年・小学校6年・高校6年の計13年間が義務教育となりました。これは従来の10年間から大幅に延長された改革で、国際標準に合わせることを目的としています。
日本では小学校6年・中学校3年の9年間が義務教育ですが、フィリピンでは幼稚園から義務教育が始まり、中学校という区分がない代わりに高等学校が6年制となっています。フィリピンの高校6年制は、前期3年間が日本の中学校に相当します。
1-2. 学年の区分と進級制度の違い
学年制度と進級システムにも大きな違いがあります。
項目 | フィリピン | 日本 |
学期制 | 4学期制 | 3学期制 |
新学年開始 | 9月 | 4月 |
長期休暇 | 7~8月(夏休み) | 12~1月(冬休み)、7~8月(夏休み) |
年間授業日数 | 約200日 | 約205日 |
留年制度 | あり(一般的) | あり(稀) |
飛び級制度 | あり | なし |
フィリピンは1学期が9月~12月、2学期が1月~2月、3学期が3月~4月、4学期が5月~6月の4学期制で、春休みや冬休みはなく、長い休みは7月と8月の夏休みだけです。
フィリピンでは学力に応じた個別の進級が認められており、学習レベルの高い子供が飛び抜けて出てくる結果となっています。一方、日本では同学年集団での協調性を重視し、原則として同年齢の児童生徒が一緒に進級する制度となっています。
2. 授業内容と指導方法の違い
2-1. 教科書の使用方法と更新頻度
教科書システムには両国で異なるアプローチがあります。
項目 | フィリピン | 日本 |
教科書費用 | 公立は無料配布 | 無償給与 |
教科書の管理 | 学校保管(貸出制) | 個人所有 |
持ち帰り | 基本的になし | 毎日持参・持ち帰り |
カバン | キャリーバック使用 | ランドセル・リュック |
副教材 | 限定的 | 豊富 |
フィリピンでは多くの学校でキャリーバックを使って通学しています。これは教科書が学校に保管され、必要に応じて貸し出される制度のためです。日本では個人が教科書を所有し、毎日持参することが一般的です。
2-2. 英語による授業とその影響
言語教育における最も大きな違いは、英語の位置づけです。
項目 | フィリピン | 日本 |
英語教育開始 | 幼稚園から | 小学校5年生から(2020年より3年生から) |
授業言語 | 小学校高学年から英語中心 | 日本語中心 |
英語の位置づけ | 公用語の一つ | 外国語 |
教師の英語力 | ネイティブレベル | 様々 |
宗教教育時間 | 多い | なし(私立除く) |
フィリピンでは英語教育が幼稚園から始まり、小学校高学年では基本的に授業は英語で行われます。子どもたちは幼稚園から英語を使って授業を受けているため、自然に英語能力が高くなり、フィリピンの中学生の方が日本の大学生より英語が上手です。
これは単に語学力の差ではなく、英語が使えることで勉強に必要な情報を英語で得られるという学習環境の根本的な違いを生み出しています。
3. 学校生活と文化的背景の違い
3-1. 制服や校則の違い
学校生活における規則や文化には、両国の価値観の違いが反映されています。
項目 | フィリピン | 日本 |
制服 | あり | あり |
アクセサリー | 許可(ピアス、ブレスレット等) | 禁止が一般的 |
髪型規定 | 男子のみ規定あり | 男女ともに規定あり |
靴の規定 | 比較的自由 | 指定靴が多い |
個性の表現 | 認められる傾向 | 統一性重視 |
フィリピンではピアス、ブレスレット、ネックレスなどのアクセサリーがOKで、制服はあるものの男の子だけ髪型が決まっています。これは個人の自由を尊重する文化的背景があります。
日本では「みんな同じ」という協調性を重視する文化から、服装や身だしなみの規則が厳格に設定される傾向があります。
3-2. 授業時間と休憩の取り方
学校での時間の使い方にも特徴的な違いがあります。
項目 | フィリピン | 日本 |
1日の授業時間 | 6~7時間 | 6時間(小学校)、6~7時間(中高) |
昼休み | 長時間(1時間程度) | 短時間(45分程度) |
清掃時間 | 限定的 | 毎日の清掃時間あり |
課外活動 | 選択制 | 部活動が盛ん |
下校方法 | 親の迎え必須 | 徒歩・自転車・公共交通機関 |
フィリピンではみんな車通学で親が迎えに来ないと学校から出られません。これは安全面の配慮と家族の結びつきの強さを示しています。
日本では自立性を重視し、子どもたちが自分で通学することが一般的です。また、清掃時間を設けることで責任感と共同作業の重要性を学ぶ文化があります。
4. 教育環境と施設の違い
4-1. 教室の設備と学習環境
学習環境の物理的な違いも教育の質と方法に影響を与えます。
項目 | フィリピン | 日本 |
机の形式 | アームチェア式 | 個別机・椅子 |
教室の収容人数 | 40~60人(公立) | 30~35人 |
エアコン設備 | 私立中心 | 全国的に普及 |
IT設備 | 限定的 | 1人1台端末推進 |
図書館 | 学校により差が大きい | 充実 |
フィリピンでは机がなくアームチェアーを使用しています。これは教室レイアウトの柔軟性を高める一方で、筆記作業には制約があります。
フィリピンでは私立の学校がとても多く、裕福層の子どもたちは幼稚園から教育環境が整っている私立へ通い、一般の家庭の子どもたちは授業料が無料の公立で学びます。
4-2. 教師の役割と教育資源の違い
教育を支える人的・物的資源にも大きな格差があります。
項目 | フィリピン | 日本 |
教師の待遇 | 地域により大きな差 | 全国的に標準化 |
教師の研修制度 | 発展途上 | 充実 |
教材の充実度 | 限定的(特に公立) | 豊富 |
特別支援教育 | 発展途上 | 制度化されている |
家庭との連携 | 密接 | 定期的 |
教師の役割においても文化的な違いが見られます。フィリピンでは教師への敬意が非常に高く、権威的な指導が一般的です。日本では教師と生徒の関係がより対話的で、個々の成長を支援する役割が重視されています。
5. まとめ:フィリピンと日本の学校制度の違いとその背景
フィリピンと日本の学校制度の違いは、単なる制度の差ではなく、それぞれの国の文化的価値観と歴史的背景を反映したものです。
フィリピンの教育制度の特徴は、多様性と個性を尊重する文化から生まれています。2012年の教育制度大改革により、国際標準に合わせた13年間の義務教育が導入され、英語を中心とした国際的な教育環境が整備されました。留年や飛び級制度により、個人の学習ペースに応じた柔軟な進級が可能です。
一方、日本の教育制度は集団の協調性と均質性を重視する文化的背景があります。同年齢集団での協働学習、厳格な校則、清掃時間などは、社会性と責任感を育成する独特のアプローチです。
これらの違いを理解することで、フィリピンでの教育選択や現地での学校生活により適切に対応できるでしょう。どちらの制度にもそれぞれの利点があり、子どもの個性や将来の目標に応じて最適な選択を行うことが重要です。
フィリピンの教育環境は、特に英語教育において大きなアドバンテージがあります。グローバル人材の育成を考える場合、現地の教育制度を積極的に活用することで、子どもたちにとって貴重な国際経験となることでしょう。